
ブリトニーの屋上庭園 / Britney’s Terrace Garden

「ブリトニーの屋上庭園」
素材:キャンバス・油彩 162㎝x162㎝
「ブリトニーの屋上庭園」ディテール



私は兄一人。第一人の三人兄弟の真中に生まれた。兄と弟は、それぞれ、家長になるという前提で育てられた。 教育や将来の方向づけも、女の私とは差がついていた。私は自分のやりたかった道とかけ離れた大学に進学し、 あとは専業主婦の道を選んだ。
私の人生は、言わば女としての定形的な生き方を強要されたようなものだった。趣味やボランティアなどいろいろなことを経験、家族を愛し幸せな生活をすごしてきたが、自分なりの専門を持たないで生きているということに強いコンプレックスがあった。
子育てが終りポカンとして日々を送っている私をみて娘たちは、私が子どもの頃から憧れていた絵の世界・女子美受験をセットしてくれた。
女子美生活6年間を総括するに当り、「ブリトニーの屋上庭園」を描いた。大地に根を張りながらも、自由に大空へと広がり、樹木や草花が伸びてゆく明るく爽やかな屋上庭園が舞台である。
私が、小学校に入って初めて読んだ岩波少年文庫はハドスンの『夢を追う子』何ものにも捉われずにさまざまなことにチャレンジする話である。主人公は現実には起きそうもない出来事に遭遇しながら、大きく、広く、 美しく自由な世界に羽ばたく、私は、そういう世界に強く憧れた。その憧れは、マグマのように私の中で息づいていたようだ。どこかで満足できなかったのはそのためだったのだろう。
「ブリトニーの屋上庭園」にこめたこと。それは、幼ない頃の憧れ、自分の気持ちに素直に生き、明るい世界に羽ばたく自分だ。自由奔放に生きているアメリカの歌手ブリトニー・スピアーズの名前を借りて、型にはめない自分らしさを表現したかった。幼稚に見えるかもしれないが、型にはまらない自由な画法を工夫したつもりだ。
子どもの頃の夢は小さな種のようなものだった。定形的な人生を送ることで種は土の中に埋まったままだった。 それが女子美に入学して、発芽し、生長し、屋上いっぱいに花が咲いた。どこまでもどこまでも伸びていく。これまでの私の人生、その時間と経験は決して無駄ではなかった。それが肥料となり実を結んだ。
私の心は解放された、今、もうひとつ、何か足りないと感じていた心が充ちていく。

「最初は小さなトルネードから始まった」
素材:キャンバス・油彩 162㎝x130.5㎝



Joshibi University of Art and Design, BA & Master’s Degree
女子美術大学 大学院美術研究科美術専攻修士課程 修了
女子美術大学 芸術学部絵画学科洋画専攻 修了